設計工学領域の歴史


 本領域は,もともとはシステム設計工学講座の名称で,機械システムの計画と設計に関する教育と研究を目的とする,産業機械工学科第3講座として設置されたものである.1970年5月より野本明教授が中央大学より着任し,機械振動,サーボ機構のほか,制御工学,システム工学に関する研究と教育が行われた.1970〜1974年には,野本,山本,伊東らによって,純流体素子の特性試験法とその応用,高速サーボ機構に関する研究,環境制御に関するシステム工学的研究が行われた.1974年5月,野本が退職した後,しばらく教授空席のまま伊東らによって研究と教育が行われていたが,1978年11月より赤木新介教授が三菱重工業より着任した.1986年,電子制御機械工学科の新設と機械系3学科の改組に伴い,産業機械工学科第6講座となった.1997年,大学院を中心とした改組に伴い,本講座は電子制御機械工学科に移設され,設計生産工学講座システム設計工学領域となった.赤木の退官後,2002年より藤田が教授を務め,機械システムに関する設計工学の研究と教育が続けられる.2005年4月,旧機械系3専攻が機械工学専攻へ統合改組,新たに設置された統合デザイン工学講座の一つの領域として位置づけられ,現在に至っている.

 研究内容については,1978年以降,各種機械システム,エネルギプラントなどの最適設計法に関する研究を進め,さらに,1985年頃より,人工知能技術の設計への応用,コンピュータによる各種設計支援手法の研究,設計工学の体系化,交通機関論の研究などを進めた.これらの研究の特徴は,機械システムの設計を総合工学として位置付けた上で, 「設計におけるモデリングなどの方法論に関する研究」,「コンピュータを援用した自動化手法や支援手法の構築」,さらに,「実際的な設計問題におけるそれらの適用」,の3つを相補的に展開していることにあり,それによって,ややもすれば抽象論になりがちな設計研究を具体的に有用なものとして体系化することを目指している.この基本方針に基づきつつ,個別の研究テーマは,製造業を取り巻く社会情勢の変化に合わせて発展させてきた.2000年頃より,製品系列設計方法論,DFX(Design For X)を活用した概念設計支援手法の研究など,2005年頃より,知識管理型設計支援,設計プロセス計画手法の研究など,2010年頃より,大規模で複雑なシステムの設計法,自立し分散的に運用されるシステム群で構成されるSystem of Systems の計画法,数理計画による機能と構造の創成法,などの研究を行っている.

 以上のような研究は,コンピュータ利用技術としての性格も強く,当初の最適設計法をはじめとする研究においては,大型計算機センターに設置のメインフレームを専用端末により接続して,研究を進めていたが,1990年頃からの研究展開においては,独自に高性能のエンジニアリング・ワークステーションを多数,講座内に設置し,方法論に関する研究と具体的な設計システムの構築を行なった.2000年頃からは,大規模な計算が必要な処理については研究室内に独自に設置したクラスタマシンを利用していた.現在ではパーソナルコンピュータが高機能化したことに伴ってその利用が主となっている.

 一方,本領域は学部教育・大学院教育において,主として,上流設計に関する教育を分担している.

 本学機械工学専攻および応用理工学科機械工学科目の特徴は,力学と制御を基盤として設計・生産を融合している点にある.そのもと,教育面では,従来からのアナリシス(分析)系の教育をより深化させることに加えて,シンセシス(総合)系の教育を充実させつつ,従来からの科目の系統化と新たな創成科目の導入を進められている.学部教育では,2001年度より「設計プロジェクト入門」と題する,課題の構想,問題の設定,設計の立案,評価などからなるプロセスの意味を内省により学習させる科目が導入されている.また,大学院教育では2006年度より「プロダクトデザイン」と題する,デザインの構想力・展開力やチームにおける人間力を養い,さらに,専門的応用能力を修得させるためのプロジェクト型(Project-Based Learning; PBL) 科目が導入されている.

 上記の「プロダクトデザイン」は設計方法論についての講義と産学連携のもとでのデザインプロジェクトについての課題演習を並行して進めるものであり,我が国における産学連携型PBL教育の先駆けともなった.受講学生の満足度は高く,課題提供企業からも好評を得ている.この科目は本領域を含む統合デザイン工学講座の教員を中心となって運営されている.


参考資料:
表 本講座・領域在籍教官・教員一覧 (最新情報を追記)
野本 明 : 1970 教授,1974 退職,後に東京農工大学教授
山本圭治郎: 1971 助手,1977 東京農工大学に転出
伊東 弘一: 1971 助手,1980 講師,1982 助教授,
       1990 大阪府立大学工学部教授に転出
赤木 新介: 1978 教授,1999 定年退官,名誉教授
横山 良平: 1982 助手,1990 大阪府立大学工学部講師に転出
藤田喜久雄: 1990 助手,1993 講師,1995 助教授,2002 教授
廣川 敬康: 1993 助手,2003 近畿大学講師に転出
野間口 大: 2003 助手, 2007 助教, 2011 講師, 2013 准教授
山﨑 慎太郎: 2013 准教授
矢地 謙太郎: 2016 助教

Last Update at April 25, 2016, maruyama_AT_syd.mech.eng.osaka-u.ac.jp (_AT_→@)